【成分徹底比較】タンパク質が多ければOK? 猫の健康を守る「3大栄養素」の黄金比とは
猫の栄養学

【成分徹底比較】タンパク質が多ければOK? 猫の健康を守る「3大栄養素」の黄金比とは

2025年11月3日

キャットフード選びで、多くの飼い主さまが真っ先に気にする数値。それが「タンパク質(プロテイン)」です。 「猫は肉食だから、タンパク質が多い方が良い」 これは概ね正解です。しかし、それだけでフードを選んでしまうのは、少し危険かもしれません。

愛猫の健康を支えるのは「タンパク質」「脂質」「炭水化物(糖質)」の絶妙なバランス、通称「PFCバランス」です。

この記事では、フードの成分表示を正しく読み解き、愛猫にとっての「黄金比」を見つける方法を解説します。

■ 1. タンパク質(Protein):多ければ良い、は本当か?

タンパク質は、猫の筋肉、皮膚、被毛、内臓、血液など、体を作るすべての基本となる最も重要な栄養素です。

  • 基準: 国際的な基準であるAAFCO(米国飼料検査官協会)では、成猫の維持期に必要なタンパク質の最小値は「乾物量換算で 26%以上」と定めています。
  • 「多い」の目安: 一般的に、乾物量で35%〜45%程度のフードは「高タンパク」と呼ばれます。活発な猫や、シニア期で筋肉を維持したい猫には理想的です。
  • 注意点: タンパク質が多すぎること自体は、健康な猫にとって問題ありません。しかし、腎臓に疾患を抱えている猫にとっては、タンパク質(とリン)の制限が必要になる場合があります。 また、「高タンパク」を謳っていても、そのタンパク質が「良質な肉や魚」由来なのか、「消化しにくい穀物(コーングルテンなど)」由来なのかは、原材料名をチェックする必要があります。

■ 2. 脂質(Fat):エネルギー源と「食いつき」の鍵

脂質は、タンパク質の約2倍のエネルギーを持つ、効率の良いエネルギー源です。 また、フードの「嗜好性(食いつき)」に最も大きく影響するのも脂質です。「うちの子、このフードはよく食べる」という場合、脂質の風味が猫の好みに合っていることが多いのです。

  • 基準: AAFCOの最小基準は「乾物量換算で 9%以上」です。これ以下だと、エネルギー不足や皮膚・毛並みの悪化につながる可能性があります。
  • 注意点: 脂質は必須ですが、高すぎれば肥満の元です。特に室内飼いの猫や、避妊・去勢手術後の成猫は、太りやすくなります。 一般的なドライフードでは、乾物量で15%〜20%程度が主流ですが、肥満が気になる場合は15%以下を目安にするのも良いでしょう。

■ 3. 炭水化物(糖質):猫に“必須”ではない栄養素

キャットフードの成分表示に「炭水化物(糖質)」が書かれていることは、ほとんどありません。 なぜなら、猫にとって炭水化物は「必須栄養素ではない」からです。

猫はタンパク質や脂質からエネルギーを作り出す体に最適化されており、炭水化物を大量に消化・吸収するのは得意ではありません。

  • なぜ含まれている? ドライフード(カリカリ)は、粒を成形するためにデンプン(炭水化物)が必要です。また、炭水化物は安価なエネルギー源でもあります。
  • 計算方法(概算): 炭水化物の量は、保証成分から引き算して概算します。 炭水化物(%) = 100% - (タンパク質% + 脂質% + 粗繊維% + 灰分% + 水分%)
  • 注意点: この炭水化物の割合が高すぎる(例:40%以上)フードは、穀物で“かさ増し”されている可能性があります。 もちろん、適度な炭水化物はエネルギー源として利用できますが、高すぎる場合は肥満や血糖値の急上昇(糖尿病リスク)につながる可能性が指摘されています。

■ 面倒な「乾物量計算」と「炭水化物計算」

ここまで読んで、お気づきでしょうか。 フードの成分を正しく比較するには、

  1. すべてのフードの「乾物量」を計算し直し、
  2. すべてのフードの「炭水化物」を引き算で概算する

という、非常に面倒な作業が必要になります。

「AとB、結局どっちが本当に高タンパクなの?」 「このフード、炭水化物は何%なの?」

その計算、手作業でやる必要はありません。

結論:目指すべきは「高タンパク・適正脂質・低炭水化物」の黄金比。

タンパク質だけに注目するのではなく、脂質(肥満リスク)と炭水化物(猫には不要)の量も同時に見ること。これが、PFCバランスを考える上での正解です。

「高タンパク」の定義は明確にし、「適正な脂質」で食いつきと健康を両立させ、「炭水化物」は可能な限り抑える。この3つの視点でフードを絞り込むことが、愛猫の長期的な健康を守る最短ルートです。

しかし、その比較に必須な「乾物量計算」と「炭水化物計算」は、あまりにも煩雑です。 だからこそ、私たちはその計算をすべて自動化したデータベースを公開しています。あなたがすべきことは、計算ではなく「比較・判断」です。愛猫にとっての黄金比を、今すぐ見つけ出しましょう。